ポッティングと封止の違いを生産技術の目で整理する

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車載電装部品メーカーの生産技術部に22年いた三上です。
ECUや基板の封止工程の立ち上げを何度も担当してきました。

若手のころ、ある先輩には「この基板は封止しておいて」と言われ、別の先輩には「ポッティングで」と言われました。
同じ作業なのか別の作業なのか分からず、しばらく悩んだものです。
今振り返ると、二人とも同じ工程の話をしていました。

この記事では、現場で混同されやすい二つの言葉の関係を、規格や材料メーカーの説明を交えて整理します。

封止は「目的」、ポッティングは「やり方」

封止は、部品や回路を樹脂で覆って湿気やほこり、振動から守ること全体を指します。
ポッティングは、その封止を実現する手段の一つです。

封止のやり方はほかにもあります。
エポキシ樹脂メーカーのナガセケムテックスの弱電用材料のページでは、次のように分けて紹介されています。

やり方封止する範囲成形設備向いている生産
モールド(金型成形)全体必要大量生産
ポッティング全体不要少量多品種
ダム&フィル部分不要複合基板の一部だけ守りたいとき

JISではケースが残るかどうかで分けている

プラスチックの用語を定めたJIS K 6900(プラスチック-用語)では、ポッティングを「型が樹脂で覆い包まれた物品にはりついたまま残る埋込み工程」と定義しています。
同じ規格には、樹脂で固めたあと型から取り出す「エンベッディング(埋込み)」という用語が別に載っています。

規格の上では、ケースが製品に残るかどうかが分かれ目です。
ECUのケースに樹脂を流し込み、そのまま出荷する作業はポッティングにあたります。

半導体の現場では指す作業が少し違う

ややこしいのは、半導体の世界では同じ言葉で少し違う作業を指すことです。

  • 電装や基板の現場では、ケースの中に液状樹脂を流し込んで満たす作業をポッティングと呼ぶことが多い
  • 半導体の現場では、チップの上に液状樹脂を適量たらして硬化させる方法をポッティングと呼ぶ
  • 半導体の封止では、金型に樹脂を流し込むモールド工程が広く使われている

半導体材料メーカーのレゾナックは、半導体 後工程の装置図鑑でモールディング装置を「熱で軟化させた樹脂を金型に注入し、加熱で樹脂を熱硬化させることでチップを封止する装置」と説明しています。

取引先と話すときは、相手がどちらの業界の言葉で話しているかを先に確かめておくと、打ち合わせのずれが減ります。

打ち合わせで確認しておきたい4つのこと

私が封止工程の打ち合わせで必ず確認していたのは、言葉の定義より次の4点です。

  • ケースに流し込むのか、基板やチップの上に盛るのか
  • 樹脂はエポキシ、ウレタン、シリコーンのどれか、1液か2液か
  • 1か所あたりの注入量と、量のばらつきをどこまで許せるか
  • 気泡を抜く必要があるか(真空注入が要るか)

注入量が少なければ保護が足りず、多ければケースからあふれます。
量をそろえる力は、ディスペンサーの吐出方式によって違います。

たとえば容積計量方式は、ピストンが押し出した体積の分だけ吐出するので、液の粘度が変わっても量がぶれにくい方式です。
各方式の仕組みはディスペンサー装置の種類と吐出方法を解説したページにまとまっていて、若手の勉強にも使えます。

まとめ

封止は「守る」という目的で、ポッティングはそのための手段の一つです。
JISではケースが製品に残る埋込み工程をポッティングと呼び、半導体の現場ではチップに樹脂をたらす方法を指すこともあります。

言葉がずれていても、ケースの有無、樹脂、注入量、気泡対策の4点をすり合わせれば、認識違いはかなり防げます。
封止工程を任されたばかりの方は、まずこの4点から確認してみてください。